ちまたでささやかれている「35歳限界説」という言葉・・・この言葉を今だに信じて、自分の年齢を採用ニーズに照らし合わせて、焦って物事を考えていませんか?
「35歳限界説」という言葉は、”転職年齢が35歳を過ぎると応募できる求人が一気に減ってしまう!”ことに相まってささやかれた言葉で、まだ多くの企業が60歳定年後に継続雇用制度がなかった古い時代の言葉です。
平成25年に施行された「高年齢者雇用安定法の改正(65歳までの継続雇用、再雇用等)」で、65歳まで安定して働ける環境が整った今では、この言葉に昔ほど過敏に反応する必要はないと感じます。
その証拠に企業の35歳以上の中途採用のニーズは、厚生労働省の「高年齢者雇用実態調査」を見ても分かるとおり、この改正に端を発して年々増え続けています。

私が良い例ですね。私も数年前に40歳ギリで今の会社に転職し、管理職として採用されています。
今回のお題は、”それはどういった理由で?”といった疑問と、企業側が今までの35歳限界説を覆し、なぜ35歳以上の中途採用が増えているのか!その理由についてご紹介します。しばらくお付き合いください。
35歳以上で転職するなら知っておきたい高年齢者雇用安定法
60歳定年制しかなかった時代では、定年を迎えるとそのまま退職するか、嘱託で会社に残るか、あるいは会社を離れて別の仕事に就くかしかありませんでした。
この当時は定年退職後、会社側に継続雇用の意志がなかった場合、”長い間ご苦労さんでした!”で片付けられて、以降、雇用する義務がなかった時代です。
これが平成25年に施行された「高年齢者雇用安定法の改正」の施行で一変し、定年を迎える社員が継続雇用を望む場合、会社側に以下の3つのどれかを選択する義務が課せられるようになりました。
勤怠不良や懲戒解雇は別にして、定年退職者が継続雇用を希めば、会社は正当な理由なしにそれを拒めなくなったわけです。

これが企業に何をもたらしているのか!どう変わるのか・・・そこが知りたいところですよね。
ちなみに2番目の継続雇用制度には2種類あり、会社側は以下のどちらかを選択することになります。そう・・・これは厚労省による義務付けです。
- 勤務延長制度:退職扱いとせず、雇用主、社員双方でこの5年間の働きについて合意の上で勤務する制度
- 再雇用制度:定年年齢に達した時点でいったん退職し、新たに雇用主と労働契約を結ぶ制度
ここで知っておきたいポイントは、60歳定年で継続雇用を採用している会社では、会社側と定年年齢に達した方との間で、”新たに雇用契約が結ばれる!”という点です。
この雇用契約は会社側と継続雇用者との間で取り交わすもので、行う業務の範囲や就業体系などを取り決めて、ここで新たに年収が決められます。
ただ気になるのは、継続雇用になっても今までと同じ仕事をさせられるのか?、やらせてもらえるのか?という点ですよね。
でもそこには雇用契約によって決められた雇用制限があるわけです。
高年齢者雇用安定法改正による雇用制限と年収!
継続雇用の場合の雇用制限と年収の減少!
まず初めに年収ですが、会社側が60歳定年から65歳までの継続雇用に応じた場合、多くの方が今まで付いていた役職等から外れるわけですから、一般的には年収は駄々下がりになります。
次に雇用条件ですが、どうでしょう・・・この継続雇用の5年間は年収が減るのに、会社から今までと同じ業務をさせられる!(やらせてもらえる)と勘違いしていませんか?
それは安心してください!
「高年齢者雇用安定法の改正」では継続雇用する場合に、今までと同様の仕事をさせる場合には、給料等に格差を生じさせてはいけないルールになっています。
なので会社側が定年前とまったく同じ業務に就かせる場合は、今までの年収を勝手に下げられない!ということです。(これは多くの裁判で会社側が負けています)
そりゃそうですよね!考えても見てください。
”継続雇用するから!”といっても、管理職一線で働いていた多くの方が役職を退き、責任あるポジションとは無縁の働き方をするわけですし、それでも今までと同じ業務を命じるなら、会社側にとって随分と虫の良い話になってしまいます。(👈違法です)
この代償が年収減少となって表れてくるわけですが、それはすべて会社側との雇用条件レベルで決まることになります。
会社側が”君にはここまでやってもらいたい!”と言えば、当然のことながらそれは話し合いの中で、年収は上がってもおかしくはないわけです。
企業側が継続雇用で選択する雇用条件!
次に会社側はこの2つの継続雇用のどちらを採用するか!ですが、その多くは年収が大幅に下がる「再雇用」を選択しています。
簡単な話、会社の支出が抑えられるからです。
会社の思惑とすれば、65歳まで高い給料を支払って雇用するより、役職ポジションを後任に譲り、給料を減額させて補佐的業務をさせる方を選ぶのが通例になっています。(退職者には補助金制度がありますからね。(☜ 条件によってもらえない方もいます)
企業側の人材ニーズの変化と35歳以上の転職希望者が注目すべき採用ポイント!
これから35歳以上で転職しようとしている方に注目してほしいポイントとして、まず継続雇用等の退職で空いた役職ポジションには、適任者がいなければ”新たな雇用が生まれる!”ということです。(詳細は後述します)

実際私もこれで役職ポジションに就いています。
これは誰でも思っていることですが、正直、会社側は継続雇用された方にはあまり成果は期待はしていませんし、もちろん今までと同じように第一線で働いてもらおうとも思ってはいません。
ただ企業が会社運営で一番困るのは、管理職ブランクで仕事がうまく回らないことと、それを具現化する適任者がいないことです。
管理職一線で働いていた方が役職を退くにあたり、管理職足る能力のある部下が育っていれば良いのですが、現実的に管理職の後継者不足で喘いでいる企業は少なくありません。
そうなれば会社は後継者確保に躍起になって、何としても後釜に据える人材をあれこれと模索する動きに変わります。
無理もないですよね。
社内で50歳を過ぎても形を示せず役職に就けないような方に、この重要なポジションを任せるわけにはいかないわけですし、社運が掛かっている分、”若年社員にこれを任せるには荷は重い!”と会社が考えるのは当然のことです。
そこで会社側は長期的展望を考えた場合、手っ取り早く豊富なビジネススキルを持つ他所で培った血を入れて、即戦力としてテコ入れする方が理に適うわけです。

そこに35歳以上の経験豊富な人材の雇用が生まれるわけです。
こういった後継者不足の中で企業が新たに注目している人材が、ある程度の経験年齢に達したまだ若い世代の35歳以上の方です。
私の会社でもこれと同じ感覚で、責任あるポジションで採用されるわけですから、40歳以上の方でも十分採用される可能性が高いはずですし、現実的に私の会社でも50歳を超えて管理職で中途採用されている方はたくさんいます。
35歳限界説が昔と違って、35歳以上の方でも経験とビジネススキルを持っている方の採用ニーズが増えているのは、継続雇用の制限と継続雇用者への支出、そして適任者不足が背景にあるわけです。
企業側の中途採用ニーズは、空いた役職ポジションの穴埋めにあるわけですから、すでに35歳以上の雇用のパイが広がっている分、もう35歳限界説!という言葉はすでに死語になりかかっているわけです。
35歳限界説の昔と今!(まとめ)
私は今の会社で中途採用担当者を兼務しているので何となく分かるのですが、まず今の企業はこの高年齢者雇用安定法の改正以降、中途採用募集で35歳限界説にはそんなに拘ってはいないと感じます。
会社は仕事が回ってナンボですし、主任職があって係長、そして課長、部長と一種のミッションで動いているわけですから、後継者採用は今後もこの高年齢者雇用安定法の改正を受けて、年齢に合わせた中途採用は継続されるはずです。
と言うか、もともとの話!
35歳限界説!って、単に中途採用で人材を募集したい企業のボーダー年齢が35歳に集中していただけなんですよね。
だからと言って、当時35歳以上の年齢の方の中途採用枠が少なくなかったわけではありませんよね。
もしそれが現実なら、少子高齢化の今の日本では社会が回らなくなってしまいます。
私の会社(技術系)の例をひとつ挙げると、しっかりとしたビジネススキルがある方なら50歳前後でも採用しますし、採用実績も豊富です。

現に私も40歳ギリで今の会社に転職を果たしていますからね。
一度この2月の転職サイトを覗いてみてください。
大手転職サイトのリクナビNEXTでは、先月(1月)の段階で41,000件、2月現在では約42,000件の求人数がサイトに掲載されています。
業種により求人数に偏りはありますが、これだけの求人件数が物語るように、今の社会は35歳なんてまだまだ若い世代だ!というのが感じられるはずです。
”もう35歳以上だから無理!”なんてくだらない話は止めて、こういった状況を踏まえて次のステップに進みましょうよ。
転職サイトの募集では、厚労省の「募集・採用における年齢制限禁止」の年齢指導があるため、”〇〇歳以下を募集”とは大ぴらに書いてはいませんが、よーく採用企業の募集要項を深読みすれば分かるはずです。
そこには企業がどんな人を求めているのか!それができるのは〇〇歳以上でなければできないはず!というのが自分の中で見えてくるはずです。
もうすぐ企業の求人件数がピークを迎える3月になりますが、本気で転職したいのなら、それに合わせて一度転職サイトを使ってあれこれリサーチするのも一つの方法です。
転職って情報なしには絶対に先に進めませんからね!
まずは企業リサーチから始めて、書かれている内容の文言が”何を意味しているのか!”から、企業の要望を読み取ってみてください。
そこには自分が知らなかったものが必ず見えてくるはずです。
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